高村雑記

高村が書きたいことを、書きたいときに書きたいだけ書くブログ……のはずが、最近はアニメに偏りがち

【リコリス・リコイル10話感想】ミカと千束に見る親子関係

リコリス・リコイルにおいては二組の「父と娘」が登場します。

それは言うまでもなく、「ミカと千束」と「ヨシさんと千束」です。

今回はその二組のペアを比較しながら話を進めていきたいと思います。

ミカの葛藤

リコリコ作中において、最も強く、最も深く葛藤しているのはミカではないでしょうか。

一方では、「千束を最強の殺し屋に育ててくれ」とシンジと約束する。

もう一方では、千束は❝健全❞な不殺の精神を力強く育んでいく。

シンジは千束の命の恩人だ。

その恩人との約束を無下にすることはできない。

でも、千束への父としての愛情は膨らんでいくばかりで、とてもそんな命令を下すことはできない。

そもそもシンジは千束の尊敬の対象であり、そんな千束がシンジに幻滅するであろうことは言えたものではない。

「私の命令だ」と嘘を吐いて殺しをさせるなんてもっての外だ。

でも、もしも千束が「最強の殺し屋」になれば、千束は新たな人工心臓を得てさらに寿命を伸ばすことができるかもしれない。

だが千束にそんなことはとても……。

こんな感じで、ずっと堂々巡りを繰り返していたんじゃないでしょうか。

ミカと千束の親子関係

やはりと言うべきか、ミカは父としての愛情には抗えず、希望する不殺の道へと千束を導きました(ゴム弾はミカが作成している物です)。

でも一方で、こんなことをしていては……という後ろめたさも多分にあったはず。

言った方が良かったのか? お前の生き方は間違いだ。殺しを重ねればシンジはまたお前を助けてくれると。言えば良かったのか? 教えてくれ、千束。

リコリス・リコイル第10話より

晴れ着姿の千束にそう問い詰めるミカは、まるで神父に懺悔するキリシタンの様。

見ているこちらとしては胸の詰まる思いです。

このとき、千束はミカを責めることだってできたでしょう。

一つの嫌味も言わずにミカを受け入れたのは、きっと千束の生来の優しさ故です。

それに留まらず、「ありがとう、先生」と感謝の言葉まで口にする。

ミカのしてきたことは正しかったんだと。

その苦しみは報われたんだと。

千束にだって言いたいことの一つや二つくらいあったはずです。

「感謝は伝えられないとしても、なんでヨシさんが救世主さんだとずっと教えてくれなかったの?」とか、「先生は私が早死してもいいってずっと思ってきたの?」とか。

でもそんなことを言うのは、我々の知る錦木千束ではない。

「受け入れて、全力! それで大体良いことが起こるんだ」といつも前だけ向いてきたのが千束。

この「ありがとう」がミカの心をどれほど救ったか、我々の想像を超えるものがあったはずです。

もし仮に千束に貶されていたら、きっとミカは命を自ら断つことすら考えたはず。

それほどまでに、葛藤を抱えながら一人の子供を育ててきたのは大変だったでしょう。

この話を聞いても尚、「二人とも、私のお父さんだよ」と言い切る千束。

ミカからすれば我が娘ながら、後光が差して見えたでしょう。

ミカは葛藤を抱えながらも千束に無償の愛情を注ぎ、千束もミカに無償の愛情を返す

これこそがまさに、ミカと千束が本物の親子である所以でしょう。

そこに血の繋がりなど必要ありません。

「人を助ける救世主」になりたかった千束にとって、ミカも例外ではなかったということです。

ヨシさんと千束の関係性

ヨシさんは確かに千束の命を救いました。

そういう意味ではまさに「救世主」です。

ですが、それ以上のことをヨシさんはしてきたでしょうか?

そもそもヨシさんが千束を救ったのは、愛情なんていうものではなく、純粋な殺しの道具としての評価の高さからです。

そしてその後、ヨシさんは千束とミカの傍から姿を消しました。

ふらりと戻ってきたかと思えば、それは千束が殺しの道具としての道を❝違えている❞から。

あまつさえ千束を殺しはしないものの、寿命を大きく縮めるという暴挙に打って出ました。

恐らく、「殺しの道に戻るのであれば、新たな人工心臓を与える」と千束をコントロールするためなのでしょう。

ミカが「育ての親」であるならば、ヨシさんは「生みの親」です

そして千束と絶えず関係性を保ってきたのがミカで、千束との対話を隔絶してきたのがヨシさん(それがたとえアラン機関の決まりごとであったとしても)。

千束は「先生もヨシさんもどっちもお父さんって感じ」と言っていますが、私にはヨシさんが父としての役割を果たしているとはとても思えません。

「キミのせいだよ、ミカ」とヨシさんは言いますけど、「人を殺さない拳銃を作ってくれ」と娘に頼まれて断れる親がこの世に存在するでしょうか?

ヨシさんのしたことと言えば、手前勝手な信条から千束の命を救ったこと一点のみ。

千束からヨシさんへの感謝の気持ちは勿論分かりますが、本当に千束の父親をしてきたのがミカとヨシさん、どちらであるかは私が言うまでもないと思います。

余談

というわけで、「ミカと千束に見る親子関係」を以てリコリコ10話の感想とさせていただきます。

リコリコの二次創作小説執筆に没頭していたり、「台詞ピックアップレビューは俺のスタイルじゃないな……」などと考えていたら、随分と遅くなってしまいました。

まあ何が言いたいかというと……たきなと千束の関係も尊いけど、ミカと千束の関係も熱いよね!ってことです。

次話以降で積年の呪いから解き放たれたミカが活躍することを願ってやみません。